入門書にうってつけ〜笑えて、泣けて、するする頭に入る 超現代語訳 幕末物語を読んで〜

狂愚まことに愛すべし、才良まことに虞(おそ)るべし (本文より引用)

 ドラマや特集なんかでも題材に取り上げられて何かと話題になるそんな時代、幕末。日本史ファンの間でも人気の高い時代で、名だたる重要人物があちらこちらで登場しその名を歴史に刻み散っていくそんな幕末。坂本龍馬、黒船、大政奉還。こういう単語だけはなんとなく覚えているけれど幕末ってどういうことがあったのか聞かれると具体的に返事に困る。
 「あれでしょ侍やめようぜってなったやつでしょ?」くらいの返答が精一杯の方いませんか?そうです僕です。卒業した母校には申し訳なさでいっぱいになりますが僕の中の等身大の幕末です。でしたが今回の本を読んでかなり幕末に関する知識が増えました!ペリーがやってくるところから幕府と新政府との内乱までの流れが本当にわかりやすく楽しく読める内容になっている本です。というのもこの“幕末物語“はお笑いコンビ『ブロードキャスト!!』である房野史典(ぼうのふみのり)さんが書かれた本なんです。読んでいる途中に30代にはドンピシャに刺さるボケが随所に散りばめてあり展開もリズミカルでグイグイ読み進めることができ、あっという間に日本国内が揉め出します。日本史の知識が全くない状態からでも理解できるように単語の紹介なんかも挟みながら物語が進むので、幕末に興味があるけどどこから手をつけていいのかわからない方にこそおすすめの内容になっています。

 僕が1番興味を惹かれたのは吉田松蔭という人物です。当時の日本は海外からやってくる新たな勢力と交流するのか、異質なものを避け鎖国の維持のためこれらを追い払うのか、という意見の対立で国内が真っ二つに割れてしまいます。大きな大砲や船で脅されているとはいえ、不平等な条約を海外列強と結ぶ幕府に、あちこちから抗議の声が上がります。これをよく思わない幕府の偉い人は、その抗議の主を次々に処罰を加えたそうです。その抗議の主の1人が吉田松陰でした。というのも吉田松蔭は若い頃から塾の先生をやっていたため世界情勢にも詳しく、このままの日本では海外勢力に負けてしまうと早くから危機感を持っていたそうです。その塾では、その後の日本史に登場する重要人物たちが塾生として学んでいました。
 ある日、吉田松蔭は幕府のやり方にケチをつける危険人物とみなされ、とうとう幕府に捕まってしまいます。取り調べが無事終わろうかという頃に、今度は自分から幕府の要人を襲う計画があることを話してしまい死刑宣告を受けます(バレてると思って自白した説と、あえて自分から話した説とあるそうです)。
 そんな吉田松蔭が残された人に送った言葉があるそうです。それが冒頭の1行。意味は『狂って(有り余るほどの情熱を持ち、常識から外れて夢中になる)常識がわからないバカは、“行動”を起こす愛すべき存在だ。一方、頭だけで考えて理屈を言っていると、何もことを起こさなくなるので恐ろしい』(本文より引用)という内容です。学問に明るい吉田松蔭でしたが学問だけしていたのではダメだよと言っていたんですね。そしてこの言葉には実は続きがあります。

 『諸君、狂いたまえへ』
 このようなことを言って国を揺るがす大きな困難に、体ひとつで立ち向かった人がゴロゴロ出てくるのが幕末という時代です。歴史を全然知らないけど興味がある、面白い物語が読みたい、幕末をざっくり復習したいという人たちへ本当におすすめの一冊です。

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